2019-09-26

「PRODUCE X 101」から誕生したプロジェクトグループ X1のデビュー曲に盗作疑惑が浮上…K-POPの楽曲制作に用いられる「リファレンス」とは何か?


ガールズグループに関する話題ではありませんが、K-POPの楽曲制作全般に関わる興味深い内容なのでご紹介します。

現在韓国では、Mnet「プロデュースX 101」から誕生したプロジェクトグループ X1のデビュー曲が盗作疑惑に包まれています。

先月27日に発売されたX1のデビュー曲「FLASH」が、海外の有名DJクリスレイク(Chris Lake)がフィーチャリングにJarethを迎えた「Helium」リミックスバージョンを盗作したとの情報提供を受けたとメディアは伝えています。

まず、二つの曲の発売日を調べると、X1の「FLASH」は2019年8月27日のリリース。クリスレイク「Helium」のリミックスバージョンは2014年4月9日に発売されました。「Helium」が「FLASH」より約5年4カ月ほど先に出ています。

実際には2曲を聴いてみると、基本となるコード進行が一緒で、バックのオケのリフも雰囲気が同じ。また曲全体の進行と展開も大筋は一緒で、「FLASH」が「Helium」を意識して作曲されたことは間違いないようです。


X1のデビュー曲「FLASH」/ YouTube、Stone Music Entertainment


クリスレイク「Helium」(TiëstoRemix)/ YouTube、Ultra Music


海外の有名アーティストとの共同作業だけでなく、多数のアイドルのアルバム収録曲作詞・作曲にも参加した有名プロデューサーのAさんの所見によれば、両方の曲が非常に「似ている」とのこと。

その理由としてイントロが同じKeyで始まる点を挙げました。しかし、盗作で断定は曖昧な部分があるとしました。彼は「FLASH」の作曲家が「Helium」を参考にして作った可能性に言及しました。

Aさんは「ほとんどの芸能事務所はプロデューサーにアイドルの新しいアルバムコンセプトなどを説明し、リファレンス(reference・参考)の曲を送る。今回のアルバムは、これこれこのような雰囲気の曲を書いてほしいとサンプルを送る」と説明しました。

続いて「おそらく 「FLASH」の作曲家たちも「Helium」を参考にして作成したものとみられる」としたうえで、「これを法的に盗作か否かを問うには、曖昧な部分がある。心証はあるが物証がないからである。作曲家の良心の問題だと思う」と語りました。

X1の「FLASH」は有名な作曲家チームが作りました。このチームには、スコアとメガトン、ワンスター(歌手イム・ハンビョル氏)などが属しています。ほとんどスコアとメガトンが伴奏を作成し、その上にワンスターがメロディーを乗せる方式で作業します。ここで伴奏作業に「Helium」を参考にした可能性が高いとみられます。

Aさんは「国内に発売された曲の中で、海外の曲を参考にして作成されたことを確認するのであれば、100曲以上も出てくる。この曲よりも大きな未知のケースもある」とし「この曲だけの問題ではない。これまでの盗作是非議論も「リファレンス」から始まった場合が多かった」と伝えました。

https://www.wikitree.co.kr/main/news_view.php?id=467014


端的に言って、X1の「FLASH」が「Helium」の盗作なのかと言えば、私は「違う」と思います。それは盗作議論のポイントとなるメロディラインに、同一の個所が見当たらないからです。

全体の流れはそっくりでKeyも同じ、コード進行も同一で、ただメロディを少し変えただけとも言えますが、Bメロやラップには独自性があり、この程度で盗作と言うなら、他所でも盗作だらけということになるでしょう。

ただ、Aさんの言うように「心証はあるが物証がない」ため、あとは判断する側の主観にゆだねられると思います。これは音楽のどこをもって盗用と判断するのかという、基本的な命題に立脚しています。

それより興味深かったのは「リファレンス(reference・参考)」という手法です。依頼者が作曲家に対して楽曲イメージを伝えるのは当然ですが、実際に参考となる既成曲まで送るという認識がありませんでした。これだと必然的に、「リファレンス」曲に類似した曲が多く生まれるはずです。


尚、クリスレイクは、英国出身のDJ兼ハウスアーティストです。「Helium」リミックスバージョンで作業を共にしたティエストは、オランダ出身のEDMプロデューサー。二人とも、国内外で認められているミュージシャンです。