2021-04-09

ターゲットはオシャレ女子?景井ひな X レイニッチ X tofubeats「セイソー」は、 "Kawaii"が詰まった21世紀型アイドルソングの進化系


初めてこのミュージックビデオを観たとき、何を意図しているのか意味がわからなかったばかりか、軽い憤りさえ覚えました。

この曲はインドネシアのYouTuber歌姫レイニッチ(Rainych)が日本デビューした際、彼女のブレイクのきっかけとなったDoja Cat「Say So」の日本語カバーをあらためてレコーディングしたものです。

再録音にあたってtofubeatsがリミックスを担当し、TikTokで大人気の景井ひながスターリングで映像に出演しています。まず理解できなかったのがその映像で、ひたすら景井ひなの表情のクローズアップが映し出され、主役のレイニッチがまったく見当たりません。

また、tofubeatsのリミックスはオリジナルのレトロ感が希薄で、現代的なタイトでシャープなサウンドに作り変わっています。レイニッチがDoja Catの原曲に感じたシティポップ・テイストよりも、キラキラした装飾音が目立つオシャレな曲になっているのです。


それでも、ブツブツ文句を言いながらも、なぜだかリピートする手が止まりませんでした。何か惹きつけられるものがあるのか、一周するとどうしてもまた観てしまうのです。

その理由が知りたくて、景井ひなのSNSをひと通り見たり、レイニッチのオリジナルのカバー動画と見比べたり、他の歌手のカバーを片っ端から観たりしていました。すると3日目ぐらいに、ふいにこのMVの意図するものが理解できたのです。


おそらく日本のレコード会社側は、「Say So」のレトロなシティポップ感よりも、レイニッチの声が持つ「可愛さ」に着目したのです。そして、その魅力を最大限に引き出すために、tofubeatsにはキラキラとしてオシャレなリミックスを依頼したのであり、若い子に大人気の「Kawaii」の象徴とも言える景井ひなをMVでフィーチャーしたのです。


つまりすべては、主役・レイニッチの「可愛い声」を活かすための手段であり、こうすることでより多くの人々に、レイニッチの声の魅力を届けようと考えたのだと思います。

そう気づいてからは今は遠慮なく、レイニッチ X tofubeats X 景井ひなの「セイソー」を繰り返し観続けています。最近お気に入りのJuice=Juiceの「DOWN TOWN」と、iriの「Sparkle」も併せた3曲を、飽きずにぐるぐると観ています。


虹プロの韓国合宿編の中で、ボーカルトレーナーが練習生たちに「声が可愛くない」と叱っていたシーンがありました。「面白いことを注意するんだな」と思って観ていましたが、結局、アイドルはまず声の可愛さが重要なんだと再認識しました。音源だけに接する場合、手がかりになるのは耳に聴こえる声のみだからです。

そう考えると「可愛いの極致」のようなレイニッチの声は、最強のアイドルボイスとも言えます。そこにtofubeatsのキラキラしたサウンドと、景井ひなの「Kawaii」が加わったこのMVは、ある意味「21世紀型アイドルソング」の究極の形と言えるかもしれません。