今年の初め頃、韓国のあるオンラインコミュニティに「日本で話題になっている新人ミュージシャン」とのスレッドが立ち、Vaundy、藤井風、瑛人、iri、YOASOBI、miletといった新鋭アーティストたちが紹介されていました。
日本のアイドルや女優を扱う場合、多くはビジュアルに関する話題に徹底していて、画像やGIFがいくつも掲載されています。一方で日本の音楽について語り合う場合は、アイドルは皆無でアーティストの話ばかりになります。
また、藤井風は「ピアノ弾き語りの動画をよく見ていた」、YOASOBIは「夜に駆けるのThe First Takeは本当に良かった」、またmiletは「女優のようなルックスと独特の声が魅力」という意見がありました。
総じて、「最近、日本の歌がとてもいい」という論調でした。私はこの中ではVaundyがいいと思いました。今に米津玄師や藤井風のような存在になるだろうと思いました。
そしてこのスレで私は初めて「iri」というシンガーソングライターを知りました。紹介されていた「Wonderland」を聴いての印象は「中性的で面白い声」と思った程度でした。
それからしばらく忘れていて、今度はNCTのユウタがラジオで「最近よく聴いている」とiriを紹介したので、あらためて彼女の曲をひと通り聴いてみました。その中で、強烈に刺さってきたのが昨年リリースされた「Sparkle」でした。
何度聴いてもサビで胸をグッとつかまれる気がしました。もう中毒のように何度も聴き返しました。そして今もまったく飽きずに聴き続けています。
この曲のサビは歌メロとバックのオケのリズムがズレているのが魅力で、最初はサビの入りに違和感を覚えました。オケは小節の頭から裏拍のシンコペーションで入っているのに、iriはそれにはお構いなしに、悠然と表拍で歌っているからです。
「何で合わせないんだろう?」と最初は思いましたが、これこそが「Sparkle」の最も重要なポイントだとあとで気づきました。メロとオケのタイミングがズレているからこそ、この曲特有の不思議な緊張感と浮遊感が生まれているのです。
iriの「Sparkle」には、長く愛され聴き継がれるスタンダードナンバーのみが持つ、特別な響きとエナジーがあると思います。いいものを知ることができて良かったです。