2020年の今年、韓国の音楽業界と言えばBTSの米ビルボードNo.1など、K-POPの世界的な旋風が殊更に目につきましたが、一方で韓国国内に目を転じると、意外な現象がエンタメ界の中心に陣取っていました。
トロットは韓国では昔から人気のジャンルで、K-POPの音楽番組を見ていても、一回の放送でいくつかはトロット歌手がステージに立つものです。しかし、今年の場合は人気の度合いが違いました。
きっかけは昨年に放送された演歌版「PRODUCE101」とも呼ばれたオーディション番組「ミストロット」です。この番組は当初は中高年を中心に人気を得ていましたが、家庭で見ていた子供たちの層まで巻き込まれて、最終的には番組を放送したテレビ朝鮮で、当時の歴代最高視聴率を叩き出しました。
大人気といわれた「PRODUCE101」のシーズン2でさえ、最高視聴率は5~6%程度でしたが、「ミストロット」はあれよあれよと数字を伸ばし、最終的には2ケタを大きく上回り20%超えを記録しました。
さらに今年放送された男性版の「ミスタートロット」は、イムヨンウン、ヨンタクなど番組で発掘された新人歌手の人気も相俟って、総合編成チャンネル史上最高視聴率となる35.7%を記録する気炎を吐きました。
そのため、トロット関連プログラムの再放送回数だけで、なんと月に1000回に達することが分かりました。トロットブームを越えて、今、トロット「公害」レベルという言葉が出るほどで「TVさえつければ出る」演歌関連プログラムに退屈を表わす視聴者も多いとのこと。
最近放映を開始した「愛のコールセンター」だけでなく、3月にすでに終了した「ミスタートロット」まで、1週間の再放送のみで250回に達しています。過度の再放送に視聴者たちは「もう演歌はちょっとやめてみたら良いだろう」と退屈を表しているほどです。
「ミスタートロット」「愛のコールセンター」「おいしい奴ら」などは、別名「再放送3大将」に挙げられ、7月のコメディTV「おいしい奴ら」の一ヶ月の再放送回数は1000回に達している事実が知られました。
今年はコロナの影響で、中小の芸能事務所と所属するガールズグループには苦難の年と言われました。人知れず看板を下ろす事務所も少なくなかったと言います。しかし、彼らの苦境の背景にはコロナばかりではなく、演歌の影響が大きかったとの声もあります。
ガールズグループにとっては、学祭をはじめとするイベント出演は貴重な収益源で、そこを短時間で多くまわろうとするあまりに、毎年のように自動車事故を起こしていたほどでした(LADIES' CODEの例など)。
ところが今年はそうしたイベントの枠をトロット歌手たちに奪われてしまい、ガールズグループはさらに仕事減の追い打ちをかけられてしまったといいます。それほどに、今年の韓国のトロットブームは特筆すべきレベルで、BTSの世界制覇に負けないくらい、韓国国内ではトロット(演歌)が巷を席巻したのでした。