9日に開幕する平昌冬季オリンピックでの公演のために、北朝鮮の三池淵(サムジヨン)管弦楽団が7日午前に韓国入りしました。約140人の団員は公演を行う江陵アートセンターを訪れ、7日は一日をかけて公演のリハーサルが行われます。8日に同所で公演を行う楽団は、11日にはソウルの国立劇場で公演する予定です。
2日間の公演には、それぞれ500人収容の会場が用意されたところ、競争率400倍以上の15万人の応募が殺到。急遽、会場が1000人規模に変更される大人気となっています。
三池淵管弦楽団は、複数の芸術団から選抜された精鋭メンバーで構成されていることが明らかになっています。北朝鮮側が韓国側に通知した名簿によると、三池淵管弦楽団の団員は人気女性音楽グループのモランボン(牡丹峰)楽団、万寿台芸術団、功勲国家合唱団、青峰楽団、三池淵楽団など6~7組の芸術公演団に所属しています。
モランボン楽団は現在、北朝鮮において最も人気のあるガールズバンドで、レパートリーは最高指導者(金日成・金正日・金正恩)・朝鮮労働党・朝鮮人民軍および社会主義・主体思想・先軍政治などを賛美した、プロパガンダ歌曲や軍歌を中心にしています。
また一方では、西側諸国の音楽や北朝鮮の伝統的な民謡に至るまで、幅広いジャンルを演奏することができます。ディズニー映画のテーマ曲やポピュラーヒット曲などをレパートリーに取り入れ、歌・楽器ともに非常に高い水準の演奏をステージで見せています。
モランボン楽団は、道徳的に儒教思想が強く残る北朝鮮において、ミニスカートや半袖など、露出度の高いコスチュームや、現代的でファッション性の高いヘアスタイル等で注目されてきました。少女時代をはじめ、K-POPのアイドルグループなどと比較されることもあります。
あまり情報のなかったモランボン楽団ですが、2015年頃からYouTubeなどで高画質動画も観られるようになり、以前のイメージとは違ってきていることもわかりました。音楽はより西側のポップス的なムードが取り入れられ、ボーカルチームのダンスにも、一部K-POPガールズグループ的なニュアンスが感じられる部分もあります。
Moranbong Band - 보란듯이 - With Pride
Moranbong Band: 달려가자 미래로 Dash to the Future
Moranbong Band: The World’s Most Famous Songs (US, Brazil, Russia, France...)
モランボン楽団の演奏水準は極めて高度です。歌は西洋クラシック音楽を基礎としており、個々の歌唱能力は高く、ハーモニーにも精緻なバランスがあります。また、楽器演奏もヴァイオリンを始めとして、クラシック音楽をしっかり学んだことが伺えます。シンプルに音楽集団として見れば、とても聴き応えのある演奏です。
ただ、モランボン楽団は2015年に、内容にプロバガンダの傾向があるとして、初の中国公演が直前に中止になったことがあります。今回、韓国のオリンピックという大舞台に臨み、このあたりをどうクリアするのかが注目すべきポイントになりそうです。