2019-01-26

LOVELYZの作曲を手がけるSpace Cowboy、ロングインタビューで意外な制作の事実を告白「Ah-Chooは先輩と訪れた日本でフィーリングを得た」


作曲家のSpace Cowboyが語る、LOVELYZと作曲技法に関する記事が興味深いです。

先日、日本のYahoo!ニュースで取り上げられたこのインタビュー記事では、Space CowboyとLOVELYZの関係、また代表曲「Ah-Choo」や最新曲「Lost N Found」の制作過程などについて本人が詳しくコメントしています。

Space Cowboyと言えば、作曲家ユン・サン率いるプロデュースチームONE PIECEのメンバーとして、LOVELYZファンにはよく知られています。

2015年のMBC「マイ・リトル・テレビジョン」から、LOVELYZのKei&スジョンと
ONE PIECEのメンバー3人。白い覆面姿がSpace Cowboy。


ONE PIECEではユン・サンに圧倒的な権限がある印象でしたが、インタビューを読むとチームは対等な立場なのがうかがえます。また、今までユン・サン作曲と思っていた曲も、実際はSpace Cowboyが大きく関わっていたことがわかります。

このことはクレジットがSpace Cowboy単独で表記された「Lost N Found」からも明らかで、この曲にはLOVELYZ初期からの王道サウンドが濃縮されています。Space Cowboyは「Candy Jelly Love」「Destiny」も自分が"手がけた"という言い方をしています。おそらく、ユン・サンとは密接にやり取りしながら、制作を進行させたものと思われます。


よく知られたLOVELYZの作品がどのようにして誕生したのか? また、K-POPがどれほど日本のポップスの影響を受け、どのような手順で作曲されるのかを知る上でも大変興味深いインタビューになっています。

ここではロングインタビューから特に印象的な部分をご紹介します。


「日本の影響も受けてます」Lovelyzの作曲家が語る【K-POP楽曲の作り方】
https://news.yahoo.co.jp/byline/yoshizakieijinho/20190122-00111725/

――まずは簡単に先生のキャリアをご紹介いただけますか。

10代の頃に韓国でアイドル歌手として活動していました。その頃から「自分はこのジャンルだと少し寿命が短いんじゃないか」と思うことがあって。一瞬、キラッと輝いてお金を稼ぐことができるかもしれない。いっぽう、自分が中高時代からやってきた音楽だったら、長く続けられる。やがて転向して、曲を書き始めました。

自分のアルバムも出しながら、他のグループにも楽曲を提供し始めた。女性のアイドルはLovelyzのみですね。今の彼女たちの事務所社長が、自分のアイドル時代のマネージャーだったんです。その縁から5年ほど前に「Lovelyzというグループがデビューするので、プロデュースをしてほしい」という依頼を受けたんです。

――ご自身の志向する音楽にはどんなバックグラウンドが?

今回の「Lost N Found」は、シティ・ポップやシンセポップの流れを汲むものだと思っています。この曲を含め私がLovelyzに提供してきた楽曲の音楽的なモットーは、日本にルーツがあります。日本の文化がすごく好きなんですよ。

かれこれ15年くらい日本旅行を趣味にしていて。多い時には月に一度のペースで行っています。あるいは仕事として日本でも歌手として活動していた時期もあります。その時は3ヶ月から6ヶ月ほど滞在して、しばし韓国に戻ってくるということもありました。

――おお! 日本の音楽はどういったものを? 

中高生の頃から日本の音楽に本当に強い影響を受けてきました。最初はMr.Childrenや宇多田ヒカル、m-flo。昔に遡るとYMO、坂本龍一、そういったアーティストの曲を聴きながら育ちました。ジャンルは幅広く聴きましたね。日本の音楽の何に惹かれたかというと、その感性です。直線的に「自分は悲しい」と言葉で表さないんだけど、これを迂回して表現する。メロディや間接的な言葉で表現するんです。この点に感銘を受けました。

今でも個人的に志向している路線は、日本のシティ・ポップやシンセポップですよね。AKBのような元気を出してくれる音楽にも関心はありますが、自分のスタイルで表現してみたいのは、80年代・90年代の日本の少し悲しい音楽の感性ですよね。

――実際に日本の影響を受けて書いたLovelyzの楽曲はあるでしょうか?

当初は「ONEPIECE」という作曲ユニットを先輩と組んで活動を始めたのですが、その先輩もとても日本の音楽が好きで。「Ah-Choo(アチュ)」(2015年10月)や「Hi (アンニョン!)」(2015年3月)を書く前に、二人でなんとなくフラッと日本に行ってきたんです。美味しいものを食べて、街の風景を眺めて。ホテルの部屋でテレビを付けていると、夜通しで流行りのミュージックビデオを流しているんですよね。そうやってフィーリングを得たこともあって、いい曲が書けたんじゃないかと思っています。



――Lovelyzとの縁は本当にデビュー当時からになります。

はい。先程お話したとおり、Lovelyzとの縁は、所属事務所の代表が私の昔のマネージャーだったという点から始まります。自分自身がアイドル歌手だった時期は、とにかく世間知らずでしたよね。高校生でしたから。マネージャーだった先輩も若かった。ともに苦労を味わった関係から、今、40代になって再び一緒に仕事を出来ている。とても嬉しいことですよ。だからこのインタビューも含め、Lovelyzに関することはとても協力的になれますよね。

上の楽曲のほか、デビュー曲の「キャンディジェリーラブ」(2014年11月)、「デスティニー」(2016年4月)も手がけました。今回は彼女たちにとって2~3作ぶりに仕事をしましたが、長い期間関わりをもっていることで事務所の他のスタッフとも親しくなり、特別な感情が生まれていますよね。

――K-POP楽曲の作曲とは、どんな過程で出来上がっていくものなのですか?

作曲家が曲を書く時、事務所側から「参考曲」を渡されることが多いです。他のグループの楽曲をもって「こういう風なコンセプトでやりたい」というサンプルを示されます。その後作曲を始めるのですが、今回の「Lost N Found」はとても長い時間をかけて作りました。曲を書くにあたって重要視する点はいくつかあります。まずはグループのイメージです。そこを思い浮かべながら作る。

Lovelyzの場合は、かなりオリジナルのコンセプトだと思うんですよ。はっきりと路線が確立されている。デビュー作「キャンディジェリーラブ」を書いた時にはまだ彼女たちに会ったことがありませんでした。だから写真を見て想像しました。そうしてまでもイメージを掴むことにはこだわりますね。

――オリジナルのコンセプトとは?

はっきりとした「純情路線」です。韓国の女性アイドルグループには、少女っぽいのにパワフルなグループが存在します。日本のAKBのようにかわいらしいコンセプトとは少し違うかもしれません。あるいは韓国にはかなりセクシーなグループも存在してきた。そういったなかで、Lovelyzは本当に独自の路線ですよ。実際のメンバーも、純情なんですよ。

韓国での同世代の女性(20歳から25歳)っぽくないというか。とても純粋。デビューして4年経つというのに、本当に変わらない。いまや韓国で人気もあり、認知度もあるグループです。そうなるとメンバーの性格や態度も変わりうると思うのですが、彼女たちは違う。そういったイメージは、私が曲を書くときにも重要な部分になりますよね。

――(Lost N Foundは)なぜ冬っぽく感じられるのでしょう。

まずは楽曲のデモを作りました。この段階では、少し明るかったんですよ。韓国で発表された曲の説明では「マイナーとメジャーが往来しつつ、感情を表現している」という下りがあります。じつは当初、曲の中にマイナー部分はありませんでした。すべてメジャー。まあ少しだけ抑えた感じのマイナーがあるという。

改めて歌詞をみると、サビ部分に「募った 思いを すべて伝えられずに(カドゥク サイン コベクドゥル ドットン タンジル アナソ)」という悲しい内容がある。そのあとの部分は「こうしてほしい」という願望が入っている。最初の部分は歌詞に合わせてマイナーとして、あとの部分はメジャーにしました。あとは後半部分の「あなたが好き 軽く 伝えても」という部分の歌詞が、すごく悲しく感じられたんですよ。片思いではないようには見える。でも、男子が先に告白してリードをすればいいのに。悲しさを表すため、マイナーにしたんですよ。


「Lost N Found」を作曲中のSpace Cowboy


――メンバーが歌っていく段階で「ここが難しい」といった話は聞こえてきましたか?

この曲のメロディーは「聞きやすいが、少し歌いにくい」というものでしょう。歌詞でも本人の仮想と現実世界の話が行ったり来たりする部分があって、そこでメロディーも変わる。往来するんですよ。特にスジョンは少し大変だったかもしれないですね。彼女のほうから何度か「録り直したい」と申し出てきましたよ。

僕としては心配した部分はクリアされていて、すごくいい出来栄えだと思ったとしても。むしろ歌へのこだわりが強いのは、メンバーのほうですよね。今回だって、僕はOKだというのに、合わせて5回ほどレコーディングをやり直したんじゃないかな。レコーディングは一度始めたら10時間位続けてやるんですよ! 他のアイドルグループはあまりメンバーからやり直しのリクエストはないらしいんです。さらに彼女たちは、歌と同時にダンスのレッスンをやる。かなりタフな時間だったと思います。一生懸命やってましたよ。

(インタビュー抜粋はここまで)



「Ah-Choo」を初めて聴いた時「なんて80年代の日本のポップスっぽいんだ」と感じたことを思い出します。なんとなくオメガトライブをイメージしました。その前の「Hi~」を聴いた時には、同じく80年代に活躍した作曲家・林哲司氏を思い出しました。

インタビューでSpace Cowboyは日本のシティ・ポップに影響を受けていると明かしています。また「Ah-Choo」「Hi~」は日本のホテルで観たテレビのミュージックビデオなどからイメージを得たとも語っています。

「Destiny」もそうですが、LOVELYZの楽曲が持つ80年代日本のアイドル歌謡の雰囲気は、こうした背景から生まれていると知りました。日本人がK-POPに惹かれる理由も、こんなところに秘密があるのかもしれません。

インタビューでは最後に、Space CowboyがLOVELYZのメンバーひとりずつについて語っています。色々な意味で興味深く、内容の濃い記事です。

https://news.yahoo.co.jp/byline/yoshizakieijinho/20190122-00111725/




Posted in  on 1/26/2019 by TEN |  

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