最近、LOONAについて調べているとODD EYE CIRCLE以降、YvesやChuuへの流れで好きになったというファンをよく目にします。LOONAは1/3のユニットまでと、キムリプから始まったシリーズとの間に大きな音楽的変化があります。しかし両者には、外面的な音楽の造りを超えて共通するポイントがあります。それはK-POPでもJ-POPでも洋楽でもない「Loona the World」の音楽であるという点です。
LOONAファンには特にK-POP好きではない方も多いようです。しかしなぜ、自分がLOONAにだけ惹かれるのかわからない方もいるようです。その答えを今からお教えしたいと思います。
LOONAが所属するのはBlockBerryCreativeという企画会社ですが、音楽面でコンセプトも含めてプロデュースしているのはチョン・ビョンキという人物です。彼はTWICEのJYPに在籍した頃、2PMやmiss Aの立ち上げに参加し、特に2PMの日本デビューに大きく関わりました。また、Woollimに移籍してからはLOVELYZとINFINITEを生み出しました。今ではK-POPで当たり前になっているティーザープロモーションの形式は、ビョンキ氏が始めたと言われています。
Woollimを去って翌年2016年冒頭には、事務所を越えた大物デュエットとして話題を呼んだEXO ベッキョンとmiss A スジの「Dream」をプロデュースしました。その後はPolarisとの関わりを持つようになり、LADIES' CODEのカムバックアルバムをプロデュースしています。そして同じく2016年の後半から、Polarisの子会社として新設されたBlockBerryCreativeのLOONAと関わるようになり、楽曲やミュージックビデオをプロデュースしています。つまり、LOONAの音楽や映像の世界観は、チョン・ビョンキ氏が描いたものと考えて差し支えありません。
ビョンキ氏は個人ブログで月に3,4本ほど、海外のミュージックビデオを取り上げてコラムを書いています(https://blog.naver.com/gxxd)。彼が扱う楽曲は、ほとんどが洋楽です。たまにJ-POPについても触れています。しかし、数少ないJ-POPについての文章からも、ビョンキ氏がかなりのJ-POP通であることが伺われます。最近、彼が取り上げたJ-POPには、宇多田ヒカルの「二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎」があります。
以前にも宇多田ヒカルの「First Love」について書いたことがあり、好きなことが伺えますが、今回は椎名林檎の夫でミュージックビデオディレクターの児玉裕一の映像も褒めています。また、音楽については昨年12月に次のように書いています。
『異変がない限り私のプレイリストの中で今年のバラードになる可能性が大きい。歌詞は悲しく切ない。この曲を聴くたびに、見るたびに、今の私を反省することになる』
さらにビョンキ氏は今年に入り、米津玄師「春雷」について書いています。
『メロディはリズムに基づいて作られる。リズムをベースに音の直線と曲線を描かなければメロディーに認められにくいということだ。そして、それは一般的な人の予測通りに流れなければならない時があり、時には予測を超えた形式の意外性がなければならない』
ビョンキ氏は米津玄師のメロディが持つ「意外性」を強調しています。これを読んで思い出したのが、先日テレビの「関ジャム」でプロデューサー蔦谷好位置氏が、米津玄師「灰色と青」について解説していた内容です。
蔦谷氏は「灰色と青」のメロディーが「テンションコード」であることに触れ、その意外性について称賛していました。おそらく、ビョンキ氏が言いたいのも同じことだと思います(テンションコードとはメロディが和音の構成音以外の音をとることで、不協和音のように響きます。K-POPでは勇敢な兄弟(像の王国)作曲のAOA「MiniSkirt」「Short Hair」などに顕著です)。
ビョンキ氏はブログでK-POPをまったく取り上げていません。むしろ、いわゆる「K-POP的」なものを避けている気配さえ感じさせます。かと言って、プロデューサーとしては洋楽やJ-POPのコピーを良しとしないようです。そうした彼の音楽に対する姿勢が、LOONAの楽曲に反映されています。「K-POPには興味がないけれど、なぜかLOONAには惹かれる」のには、こうした理由があるのです。