NiziUの新曲は予想を超える斬新な試みがなされた意欲作でした。
11日、JYPエンターテインメントの9人組ガールズグループNiziUが、11月24日にリリースされる1stアルバム『U』のリード曲「Chopstick」のMVを公開しました。
新曲「Chopstick」は同名のピアノ練習曲「Chopsticks」が楽曲の土台になっています。練習曲「Chopsticks」(Celebrated Chop Waltz)は、1877年にユーピミア・アランがアルトゥール・デ・ルリ(Arthur de Lulli)という仮名で書いた、広く知られているピアノのための小さなワルツです。
基本的に一人で指2本で演奏できることから、お箸に見立てて「Chopsticks」と呼ばれています。片方が伴奏にまわり、二人がデュエットで演奏するようにも編曲され、または一つのピアノに並んで座り、連弾スタイルで演奏できる場合もあります。
(Chopsticksの基本旋律。指2本で演奏可能)
練習曲「Chopsticks」は、韓国では「お箸行進曲」の名で親しまれ、聴けば知らない人はいないと言われるほどの国民的なピアノ曲です。日本で例えるなら「猫ふんじゃった」のようなポジションの作品です。
(お箸行進曲 - Chopsticks の基本演奏)
YouTubeで探せば、「お箸行進曲」をジャズ風などにアレンジした無数のピアノ演奏動画を見つけることができます。NiziUの新曲「Chopstick」は、この「お箸行進曲」のオマージュ作品と知らされています。
作曲したのはJ.Y. Parkこと、JYPエンターテインメントのパク・ジニョン代表。NiziUでは最初の「Make you happy」からタイトル曲のすべてを手がけています。
作曲家とアーティストとしての代表とNiziUの相性はとてもよく、韓国でも「餅(代表の愛称)が作るNiziU曲はどれもいい」と評判も上々です。
それを踏まえた上でも、新曲「Chopstick」は少し異例とも言える斬新な楽曲です。オマージュと聞いていただけに、どの程度のものかと集中してMVを観たところ、ほぼ全編にわたり「お箸行進曲」のモチーフが背後で聴かれ、特にBメロは旋律をそのまま用いています。
明らかにJ.Y. Parkのオリジナル創作と言えるのはAメロぐらいで、サビの半音上昇する歌メロも原型が「お箸行進曲」に確認できます。しかし、Bメロのコードはよりオシャレにリハーモナイズされ、リマとマユカのラップの威力などもあって、結果として楽曲を通して聴けば、「お箸行進曲」を土台とした全く別の新鮮な作品に仕上がっています。
韓国では「お箸行進曲」をどのようにアレンジして、自分だけのものとして演奏を聴かせるかが、音楽家としてのひとつのステイタスになっています。その意味ではJ.Y. Parkの作曲家としての様々な技が施されたNiziUの新曲「Chopstick」こそ、「お箸行進曲」の究極のアレンジ作品と言えるかもしれません。
そんなことに思いを及ぼしながら、あらためてNiziUの新曲「Chopstick」のMVを観るなら、これまでとは違った魅力に気づき、より楽曲を楽しめるかもしれません。